はじめに
DV当選時、私は学生ビザ
(F1) で米国のロースクールを卒業後、就労ビザ (H1B) を取得し法律事務所に勤務していた。ちょうどグリーンカードの申請の準備をしていたときに当選通知がきたので渡りに船だった。
この体験記は、DV当選後、在日米国大使館での面接通知を受領してから、面接、米国再入国までの手続きの中で、面接通知書類に書かれていなかったことで気がついた点を記したものである。
1.時間の流れ
- 2月28日にJINKEN.COMより面接通知受領及び4月5日に面接だという知らせを受け、即日航空券を購入。銀行の残高証明書や税金の書類、事務所との契約書、アメリカの警察証明書などを揃えた。
- 3月10日に日本入りした。
- 3月11日に日本の警察証明の申請。
- 3月15日に健康診断を受け、同18日には厳封された結果を受領。
- 4月5日午前8時半に大使館に入る。即日でビザを発行してもらった。
- 4月6日米国に再入国。午後から事務所に戻り、オフィスに山積みになっている案件を目の前にし、半分安堵、半分疲労困憊のため息をつく。
- 4月22日についに本物のグリーンカードをゲット!あまりの早さに驚いたが、しかしこれで一安心。ちなみに発行日は4月16日、失効日は10年後の4月16日であった。また同日に”welcome
notice”というレターが2通も政府から来ていて驚いた。
2.
警察証明書の取得
正面玄関で「私が犯罪者ではないことを米国大使館に証明するための証明書を発行してもらいたいのですが」と言うと鑑識課に通された。鑑識課では2通の書類に記入を要求され、指紋の採取をコンピューターで行う。この指紋は今回の証明書発行を目的にしたものであるので、発行後半年経過すると警察のデータベースからは抹消されると説明を受ける。
なお、警察証明は英語/日本語両葉で記入されているので1通でよい。申請日から8日後に発行される。パスポートを本人が持参することで受け取ることができる。本人が行けない場合には、委任状などの特別の手続きを踏まねばならないので、本人が取りに行くことを勧める。
必要なものー京都府警の場合(事前に警察署に連絡して確認する!):
- バスポート
- 面接通知書類
- 印鑑
- 半年以内に発行された住民票
- 戸籍謄本
- 400円分の収入印紙
3.大使館指定の病院での健康診断
恵比寿にあるブリティッシュクリニックに行く。私の場合は関西から新幹線で来たため、新幹線の品川駅から山手線で3駅という交通の便の良さでこの病院に決めた。恵比寿駅の前にある交番に地図が用意されているのでそれをもとに歩くこと5、6分。普通の住宅街にあるアパートのような建物の2階にあるので見つけるのに苦労した。院内では飲み物は自由に飲んでもいいが、食べ物を食べては行けない。
絶対に持参せねばならないもの(行く前に病院に電話で確認をすること!):
- 面接通知書類全部
- パスポート
- コンタクトレンズ/眼鏡(視力検査は矯正視力で行う)
- 写真1枚(パスポート用でもビザ用でもいい)
- 母子手帳
- 現金6万円ほど(現金以外は受け取ってもらえないので多めに用意する)
病院ですること:
- 身長体重測定
- 視力検査
- 血液検査
-問診
(母子手帳を見た後、入院歴、病気や怪我の歴史について詳しく話していく。これをもとに大使館に提出するカルテの備考欄に特別の記載が必要かどうか判断する。精神科医にかかったりカウンセリングを受けたりしたことの有無や、そこで処方された薬を服用したことがあるかどうか、もしあるなら期間はどれくらいか等、詳しく質問される。そこで医者がそれはカルテの備考欄に記載しておく必要があるかどうか判断する。)
- レントゲン写真の撮影とその結果説明
- 下着だけになり、血圧測定、肺の音を聞く、腹部を触診
- 予防接種
合計で1時間から1時間半もあれば終わってしまう。
会計を済ませ、送料着払いで宅配便の手続きを取って帰宅した。
私の場合には、3月15日に来院し、18日にはクリニックから厳封された書類が宅急便で指定しておいた住所に届いた。
4.
大使館での面接
必要書類は市販のクリアーケースやファイルなどに順番通りに並べて入れ、タブをつけておいた。全ての書類(厳封されている書類を除く)のコピーも同様に整理整頓して提出した。
大使館周辺の警備が強化されていた関係でひどく遠回りをせねばならず、8時半の開門と同時に到着。危険物は当然だが、水も含めて飲食物の持ち込みも禁じられているので門のところに設置された大きな箱に入れさせられる。で、建物の前まで通されると「注意書き」というものを読まされる。持ち込んでは行けない物のリストである。パソコンや携帯電話、その他の電子機器が持ち込めない。金属探知機の担当の警備のおじさんたち(非常に優しい。日本人の私にも片言の英語で話しかけてくれていた。)にパソコンや携帯電話の持ち込めないものばかりを詰め込んだブリーフケースごと預ってもらった。預かり札をくれるので忘れないようにする。
その後は重いドアを必死で開けて窓口の並ぶ部屋に入る。入ると右手にある機械から待ち合い番号を必ず取る。取らないといつまでたっても自分の順番がこない。私は24番だった。8時半からの面接者は全部で33組。(順番的には遅い方だったが、書類に不備があった人や、何もかもぐちゃぐちゃに提出した人が多く大使館を後にしたのは私が一番だった。)
まずは日本人の優しいお姉さんの窓口に呼ばれ、書類を提出。私の完璧なファイル整頓術に「おお!」とおっしゃった。レントゲン写真が入っている健康診断書類も同時に提出。15分ほどで違う窓口で番号を呼ばれて、“書類に不備がなかったので大使と面接してもらいます”と言われた。5分後、大使に呼ばれて一番端っこの窓口で宣誓させられた後に“パスポートにはF1とH1Bがあるね”とか、“弁護士さんの?”とか、“仕事はどう?”とか質問されて(全部英語で2分ほど)、“午後4時に戻ってきてください”と言われた。でも助手のような人が、会計の機械が故障中で午前中には手数料の支払いができなかったので、午後は3時半くらいに戻ってきて支払いを済ませるようにとアドバイスしてくれた。33人中24番目という遅い順番にもかかわらず、一番最初に大使館を後にできたので正直ほっとした。何事も準備は万全にしておくべきである。
午後は3時に再度大使館に入り、午前中故障中だった会計所に立ち寄り435ドルを支払う。私は現金で支払ったが、会計窓口にはビザ、マスターカード、アメリカンエキスプレスのシールが貼ってあったのでクレジットカードでの支払いも可能なようだった。
24番が呼ばれたら、支払済みのレシートを持って行って、ピンク色の紙一枚(私の写真付き)と厳封された黄色い封筒をもらう。これはアメリカ入国時に必要なのだと説明を受ける。デトロイトから入国する場合、このピンクの紙と封筒だけ持っていればいいので、レントゲン写真や大使館に提出した書類を見せる必要はないと教えてもらった。
5.
アメリカ入国
飛行機を降りてイミグレーションのところまで進むと、アメリカ人と外国人に列が分かれていた。もちろん私はアメリカ人の方に並ぶ。で、大使館でもらったピンクの紙と黄色い封筒を渡すと、なにやらパソコンに入力をしていた。あと、自宅や職場、携帯の電話番号を聞かれたり、仕事は何してるの?とか、家族がいるの?えー!?日本からの移民かい?などという会話をした。終始ご機嫌なおじちゃんだった。その後、「じゃあ、スペシャルプロセッシングの列に並び直すよう」指示されるので、それに従う。
スペシャルプロセッシングの担当インスペクターは、大使館でされたような質問をしつつ封筒を開封して、再びなにやらパソコンに入力していた。私は質問に答えながら待つこと3分。すると指紋を採取されてサインをさせられて、パスポートに1年間有効のテンポラリーグリーンカードのスタンプを押してもらって、さようなら。本物のグリーンカード(緑じゃないんだよと言われた)は2、3ヶ月もしたら自宅に送られてくるそう。非常に怖そうで一瞬たりとも笑わなかったインスペクターだったが、指紋を採ったりしてくれる段階からは優しいお兄さんに変身していた。
スペシャルプロセッシングの列は2列しかなく、ここに何十人も並んでいた。私の他はフィリピン人、インド人、中国人しかいなかった。みな家族で並んでいたからかどうかは不明だが、非常に長時間かかっていたようだった。友人がデトロイト空港のイミグレーションで働いているので質問をしてみたら、このスペシャルプロセッシングの2列は、常時長蛇の列ができていて、正午の便で到着した人たちが永遠に夕方までかかってテンポラリーのグリーンカードをもらうために毎日押し問答を繰り広げているそう。だから、飛行機を降りたらさっさとイミグレーションへ進もう。
以上が私の、面接通知書類に書かれていなかったことで気がついた点、を記したものである。やはり誰しも、移民ビザを実際に取得しアメリカに入国するまでは「万が一失敗してせっかくの当選が無駄になったらどうしよう」と不安だと思う。そして情報は多ければ多いほど安心できるものなので(不要な情報の場合は多いほど混乱するだけだが(苦笑))、少しでもその不安が少なくなれば、という思いから、今回このような体験記を書くことにした。一人でも多くの方の参考になれば幸いである。
《事務局からの後日談》
S・Oさんは、当社を通じて当選された方ではなく、ご自分で応募された方でした。仕事がお忙しく、当選通知を5月中に受け取っていたにもかかわらず、机の中にしまったまま何もせずに過ごされていたようです。8月に入って慌てて当社に当選代行の依頼をされてきたときには、さすがに今からで間に合うかどうかと、当社としても多少の不安はありましたが、ご本人に状況を説明し、ご了承を得た上で、大至急申請準備にとりかかりました。それゆえ、面接通知が届いたときには当社も大変うれしく思ったものです。
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